コラム

相続時、故人の通帳が見つかったので一安心・・・にはなりません

遺産相続をする場面においては、故人の銀行口座を特定する必要があります。一般的な方法としてはまずは通帳を探すことです。もし通帳が見つかれば、故人がその銀行に口座を持っていることになりますので、銀行に問い合わせをかけて、他にも口座はあるのか? 投資信託などの金融商品はあるのか? 貸金庫はあるのか? などを調べていくことが一般的な方法となります。 ところが現代では、通帳が無い銀行口座があります。数年前から大手銀行では、新規の口座開設は原則として紙の通帳を作っくれなくなりました。別途依頼すれば紙の通帳を発行してくれる場合もありますが、発行手数料や年間手数料がかかってしまう場合も多くなっています。また、地方銀行でも、新規で口座開設をする場合に紙の通帳を発行してくれない場合も増えてきました。紙の通帳が無い場合の残高の確認は、パソコンやスマートフォンで行うのが一般的になりつつあります。このような場合に、より重要になってくるのがキャッシュカードの保管です。紙の通帳が存在しない銀行でも、キャッシュカードまで廃止されることは無いはずです。故人のキャッシュカードを探すことがより重要となってきます。
ところで私の若い頃は、通帳と印鑑とキャッシュカードは別の場所に保管しなさい、と教わってきました。もしドロボーに入られて通帳を盗まれてしまった場合でも、別の場所に保管されている印鑑が無事ならば、ドロボーは銀行からお金を下ろすことはできない、という理由です。キャッシュカードのみを更に別の場所に保管する理由はあまり無いように思えますが、おそらく念には念を入れよということだと思われます。通帳・印鑑・キャッシュカードをそれぞれ別の場所に保管することは空き巣対策としてはとても有効だとは思いますが、相続時には大きな問題に発展します。問題というのはつまり、相続人はキャッシュカードを発見しなければならなくなったということです。先に述べましたように、昨今では通帳の無い銀行口座が多くなってきました。大手銀行では新規口座を開設する場合は原則、通帳無し口座となりますし、ネット専用銀行ではそもそも紙の口通帳は最初から存在しません。この場合、故人の方が通帳とキャッシュカードを別々に隠していたらどうなるでしょうか? 相続開始時において、もし相続人の方が3通の銀行通帳を発見したとしましても、故人の方がその3行の銀行とのみ取引をされていたかどうかは断定できないのです。今の時代、通帳の無い銀行と取引されている可能性はかなり高いですので、しっかりとキャッシュカードを探していただいて、銀行の漏れが無いことを確定させることが重要になってきます。
ところでもしキャッシュカードを無くしてしまった場合はどうなるのでしょうか? 昨今では電子マネーやクレジットカードをお使いになる方も非常に増えていますので、キャッシュカードを1度も使ったことが無いという方もいるかもしれません。それに一部金融機関では、キャッシュカードが無くてもスマートフォンで現金を引きだすことの出来るATMも存在します。このような場合、ご本人様自身もキャッシュカードの存在を忘れてしまい、どこかに紛失されてしまっている場合もあるかと思います。このような場合では相続人の方々が、故人の銀行口座を探し出すことは非常に困難です。よく言われているのは、故人のパソコンで過去にどこかの銀行からメールが届いてないかを確認しなさいというものです。でも、いまの時代、ネット銀行をパソコンで使っている人も少数だと思われます。多くの方はスマートフォンを使ってネット銀行との取引をしておられるはずですが、スマートフォンはパソコンと違って買い替えサイクルが非常に短いですので、スマートフォンから過去の取引履歴を見つけることも困難です。しかもスマートフォンには(パソコンでも)パスワードを掛けてあることが通常ですので、ログインして中を調べることすらできません。こうなってしまったらもうどうにもなりません。故人の銀行口座の存在を調べることは非常に難しくなります。多くの市中の銀行にはインターネット支店というサービスが提供されています。銀行にもよりますが、日本中どこに住んでいてもインターネット支店の開設できる銀行もいくつかあります。つまり、九州に住んでいる人が、東北地方の◯△銀行のインターネット支店を開設できてしまうのです。九州で亡くなった人が、東北地方の銀行の口座を持っているなんて誰が思いつくのでしょうか?
この恐ろしい事態を回避する方法は、故人の方が生前に遺言書を残しておくしかありません。公正証書遺言書は、公証役場に安全に秘密に保管されますので、銀行口座を含むすべての財産の所在がわからなくなることは絶対にありません。遺言書は財産の配分を決定する手段のみではなく、財産の存在を次の世代に伝える手段としても有効なのです。ぜひ、公正証書遺言書の作成をご検討下さい。

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